上空域警備の「目」
Consolidated Edisonは、Axisの360°カメラとDedrone®の対ドローンソリューションを活用して上空域を警備し、接近するドローンがもたらす潜在的脅威の検出、追跡、識別、評価を実行しています。
5つの行政区の電力を管轄
Consolidated Edison of New York (ConEd) は投資家が所有するエネルギー企業として、米国で最大の規模を誇る法人の1つです。 ConEdは1823年にニューヨーク市のガス灯ランプの点灯と保守を目的として設立されました。現在はニューヨーク市とニューヨーク州ウェストチェスター郡の5つの行政区で、のべ1,000万人超の顧客に電気、ガス、蒸気サービスを提供しています。 同社はニューヨーク市の中心部に「ティア1」、すなわち重要なインフラストラクチャーとして稼働するビルを保有しており、街が送受する全電力の司令所として運用しています。
ConEdでは従来より、この重要なインフラストラクチャーの保護に最優先で取り組んできました。 セキュリティ監査では、建物周辺とアクセスに関する既存の先進的なコントロールテクノロジーが、施設の保護策として十分な水準であると確認されていました。しかしこの施設のセキュリティマネージャーは、依然として重大なセキュリティギャップが存在する可能性を懸念していました。
Consolidated Edison of New Yorkでセキュリティマネージャーを務めるScott Gross氏は、次のように説明します。「建物の上空域について懸念を持っていました。どのような防御策を講じるべきかも気になりました」 実際に、低空飛行のドローンがティア1インフラストラクチャーに接近してサービスを停止させる、あるいは他の形でConEdの業務を妨害する、といったことはありえるのでしょうか。
ConEdの立場では、そのような小型の飛行物体を遠距離で検出し、単なる迷惑行為なのか、それとも悪意のある爆弾を搭載しているのか、確認する必要がありました。 [右は、DedroneTracker上で発動したドローンアラートの画像]
国土安全保障省から、「ConEdのDedrone®/Axisソリューションは国内の非連邦政府機関の中で最も包括的な対ドローンシステムの1つである」という評価の言葉を受け取りました。
地上から上空までの脅威を評価
Gross氏はこの懸念の妥当性を判断するため、ドローン対策ソリューション企業であり、またAxisのテクノロジーパートナーとしても活動するDedrone®社に白羽の矢を立て、リスク評価を実施して建物上空でのドローン活動に関するベースラインデータを確立させることにしました。 マンハッタンは連邦航空局によってクラスB空域に指定されており、ドローン飛行禁止区域です。ところが屋上に配置されたDedroneSensorsは、建物から400フィートの範囲内で顕著なドローン活動を検出しました。
この調査結果がきっかけとなり、ConEdは一気にDedroneTrackerシステムの開発投資を進めました。DedroneTrackerシステムはドローンベースの脅威を検出し、建物を脅威から保護するよう設計されたソフトウェアプラットフォームです。 全方向DedroneSensorsと複数の多方向AXIS Q62 Series PTZ Network Camera (水平360度、垂直90度) を使い、Dedroneの膨大なドローンライブラリを参照してConEdの空域に侵入するドローンのメーカーとモデルを識別します。 Axisカメラは30倍の光学ズームを使用してドローンの飛行経路を追跡し、ドローンの種類と搭載物を視覚的に確認します。 またDedroneSensorsには、ドローンの操縦者の位置情報を三角測量で特定する機能が搭載されています。 DedroneTrackerは、このすべての情報をConEdのセキュリティ部門に所属する監視エンジニアに自動的に送信します。これによりエンジニアはアクティビティをリアルタイムで監視し、業務を保護するために必要な措置を講じることができます。 [左の写真では、DedroneTrackerが無許可のドローンと操縦者の位置を検出してカメラで捉え、視覚的に確認している。]
ConEdがDedrone®/Axisソリューションの運用を開始してから現在までに、建物上空で7,500回を超えるドローンの侵入が検出されています。 同社では、ドローンの活動が施設内の特定の活動 (セキュリティシフトの変更、貨物の到着、その他の業務イベントなど) のタイミングに合わせて発生しているかについても確認できるようになりました。 ConEdは検出されたドローンの種類、時刻、侵入のビデオ証拠に関するデータを地域の警察当局と共有しています。ドローンの操縦者に対して法的措置を講じる必要があるかの判断は、警察が行います。
無害な迷惑行為と危険な侵入者を見分ける
Gross氏は次のように話しています。「率直に言って、遊びで飛ばしているドローンなら、個人的に何の問題もありません。 ただConEdとして、上空域を潜在的脅威から保護する措置は必要です」
Gross氏は、悪意のあるドローンがConEdの業務を妨害する可能性があるいくつかのシナリオを挙げています。 現在、ほとんどのドローンには4Kカメラが搭載されており、施設侵入の方法を撮影することや、特定の従業員に付きまとうことが可能です。 また窓辺の上空にホバリングして、電話を盗聴することも可能です。 ドローンに電磁妨害 (EMI) デバイスが搭載されている場合、通信が妨害される可能性があります。 銅線をぶら下げて、重要な電線をショートさせることも可能です。 さらに、設備を破壊するための爆発物をドローンが搭載している可能性もあります。
Gross氏はこのように説明します。「ConEdの大規模な電力システムとグリッドのレジリエンシーは非常にすぐれています。それでも、ティア1ビルの接続が分断された場合に迅速に対応できるよう備えておかなければなりません。というのは、何百万という顧客に停電が生じるだけでなく、ConEdが停電に関して高額の罰金を被る可能性があるからです。 また壊滅的な爆発が発生すれば、電力ネットワークの修理と再構築の費用負担も生じます」
電力グリッドを保護する
Dedrone®でクリティカルインフラストラクチャー担当ディレクターを務めるJackson Markey氏は、DedroneとAxisの統合がソリューションにおいて脅威を評価する手法に大きな影響を与えたと話しています。 「ConEdの上空域のセキュリティにおいては、カメラが重要な役割を果たしています。 上空域でドローンの存在を視覚的に確認できるだけでは不十分です。セキュリティチームは、そのドローンの搭載物も把握しなければなりません。 Axisカメラによって搭載物の視覚的な調査が可能となったおかげで、担当者が脅威の性質を判断し、適切な対応を即座に開始することができます」[右は、AXIS Q62 Series PTZカメラの写真。]
Scott Gross氏は、ConEdのセキュリティチームがドローンの脅威を軽減するために導入した手順の一部を公開しました。 「このチームでは基本的に、異常な活動がないかどうかを確認しています。 もし何かあれば、発生しうる被害を緩和し、潜在的な不法侵入を阻止するために社内で対応を実施します。」
その方法の1つに、ネットワーク制御を別の安全な場所に切り替えるという対応があります。 安全な接続が確立されると、ConEdはティア1のネットワークを遮断することができ、また顧客へのサービスも中断することなく継続できます。