Bridge in front on city skyline
都市開発

岡崎市まちなかウォーカブル構想の実現を支える 屋外での人流計測

組織: 愛知県岡崎市
場所: 愛知県岡崎市, 日本
顧客のニーズ: 混雑状況
愛知県岡崎市, 日本, 

スマートシティモデルプロジェクトとして、マルチユース展開も視野に


課題

徳川家康公生誕の地として知られ、多くの歴史と自然の名 所に恵まれた岡崎市は、国土交通省より地方再生モデル都 市の選定を受け、都市のコンパクト化と地域の稼ぐ力の向上を図っている。市内の豊富な資源を活用し、歩いて楽しめ ることを前提とした「まちなかウォーカブル推進」がまちづ くりの重要な要素となっている。同市は、まちの回遊を促す 施設整備を積極的に進めており、整備効果を定量的に測り 更なる民間投資を呼び込みたいという要望があった。そこ で人の流れに生じる変化、さらには人の流れを変える行動 誘導のための実証を行うプロジェクトが発足した。これまで カメラによる人流計測は屋外での実例がほとんどなく、夜 間の撮影等精度を担保する上でも実証実験が必要だった。

解決策

まずエリア内にある東岡崎駅の各出入口へ、固定ボックス型 ネットワークカメラ「AXIS Q1615 Mk II」 4台のカメラを導入 し、NECソリューションイノベータ株式会社の「FieldAnalyst」 を利用した人流計測が開始された。商店街では、より精度の 高い分析のベースとなる画像の提供を可能にする固定ドー ムカメラ「AXIS Q3518」が採用され、将来的には防犯用途へ も利用可能なマルチビューストリーミングを備えている。人 道橋については橋の両端から各1台のカメラで正確に通行者を把握する必要があったが、望遠機能を備えたPTZカメ ラ「AXIS P5655-E」を設置することで、遠距離かつ夜間でも 通行人数を正確に出すことができるようになった。それぞ れの利用シーンに応じて豊富なAxisのポートフォリオの中 から最適なカメラが選定された。

効果

駅周辺、商店街、緑道、人道橋に導入された合計21台のカ メラにより、市内の主要箇所で人流計測のデータの取得が できる土台が整った。屋外でも屋内と同じく高い精度でデ ータが取得できており、現在は各所で取得したデータを市 役所をはじめ様々な関係者と共有している。特に、コロナ禍 の外出自粛要請時において、取得したデータを活かして、外 出自粛の効果を把握できたことや、市役所において、より遅 い時間に職員を多く勤務させる分散勤務の時間帯への活 用できたことは、想定外の大きな成果であった。将来は設 置したカメラを人流計測だけではなく、見守り、防犯といっ たマルチな使い方も計画されており、市民のためのスマー トシティ構想がさらに進められることが期待される。

屋外でも屋内と同じく高い精度でデータが取得でき満足しています。人流計測を行うことにより、公共投資によるまちづくりの効果が定量的に計ることができ、データを用いて民間事業者と対話することで、よりこの地区での投資に興味を持ってもらえるなど、一歩進んだまちづくりへ活用しています。
鈴木昌幸氏
岡崎市役所 総合政策部企画課

システム導入の背景と詳細

岡崎城を取り囲む中心市街地「乙川リバーフロント地区」 に多くの歴史と自然の名所に恵まれた岡崎市は、同地区内 を歩いて楽しめる「ウォーカブルシティ」をコンセプトにま ちづくりを行っており、そのために必要とされる公共事業 を推進してきた。また民間投資を促進するために商店街活 性化に向けた出店、再開発を視野に入れた施策も行ってい る。

「公共施設整備により、新たに生まれた人の流れを活 かし、今後は民間事業者による投資を呼び込み、まちの魅 力を作っていく必要があると感じています。そのためには、 人の通行時間、属性、人数といった情報をエビデンスベー スで共有したいと考えるようになりました。」と語るのは、 岡崎市役所 総合政策部企画課の鈴木昌幸氏。

このような 考えからスマートシティの構想に至り、その下支えとなるデ ータの取得・分析の点で実績のある日本電気株式会社(以 下NEC)ならびにAxisと協働することとなった。

2019年、再開発の足掛かりとしてまず東岡崎駅から要所へ のスムーズな誘導を実現するペデストリアンデッキを設置 した。さらに、市の中心を流れる川が人の流れを分断して おりまちを歩いて楽しむウォーカブルシティを実現する上 で障壁となっていることから、2020年には対岸へ往来を活 性化する車が通れない人道橋を建設した。

これらの公共事 業の有効性を測るため、さらにはまちの活性化に役立つデ ータ取得のために、映像を利用した人流計測を実施するこ ととなった。屋内の人流計測の実績は数多くみられるもの の、屋外での実証例はまだ全国的に少なかったことから、 国土交通省のスマートシティモデルプロジェクトに2019年 と2020年に連続して選ばれている。

「1年目はとにかくやっ てみよう、2年目は実装に重きを置いて実施してきました。 まちづくりへのデータの活用ビジョンと施設整備と一体的 にまちにシステムを常設化していこうという我々自治体の 覚悟をご評価頂いたのではないかと考えています。」(鈴 木氏)。

Camera on street light pole

ペデストリアンデッキへ設置された「AXIS Q1615 Mk II」導 入以降、実績をつけながら商店街、整備中の中央緑道へと 設置を拡大していった。商店街では、通りを通る人の属性 等の情報も含めた分析を実施することから、屋外対応型で 4K映像を提供できる固定ドームカメラ「AXIS Q3518」が採 用され、広範囲で全体をとらえる場合にもズームで細部を 分析することも可能となっている。

いずれも街路灯など高さのある場所にカメラを設置し、す ぐ近くにPC機材を収めたボックスを配置、屋外で撮影した 画像をローカルで分析を行うことで、取得画像を記録に残 すことなく、結果データのみをクラウドへ送って活用している。

幅16mの人道橋では、橋の南北両端から各1台のカメラで いかに精度を高く通行人数を把握するのが課題だった。近 い距離から撮ると把握できる範囲が狭くなり、遠いと精度 の懸念が生じる。様々な方向から検証を重ね、遠距離から の撮影にも精度を保てるカメラとして採用されたのが望遠 機能を備えたPTZカメラ「AXIS P5655-E」である。

暗闇でも 高解像度の画像を提供するテクノロジーLightfinder 2.0 を 備え、夜間でも正確な人数把握ができた点もポイントとな った。特殊な要件がない場所に関しては、各機能のバラン スの取れた固定ドームカメラ「AXIS P3245-LVE」が導入さ れた。事前に評価し、ベストな選定を行っているものの、 実際に現地で設置してみると戸惑うこともあったという。

Pole camera on city street

時間帯によって画像の読みやすさ・読みにくさ、橋、街路 灯など3m前後の高さから撮影するため、目指す画角や 「FieldAnalyst」との調整など、やってみて初めて分かる ことも多かった。「幸いカメラ自体の扱いは分かりやす く、Axisチームによる現場でのサポートも充実していたの で未経験のこともありましたが導入することができまし た」と今回のシステム導入を担当したNECソリューション イノベータの岡元昌哉氏は語っている。

現在、取得、分析されたデータは市役所、イベント関係者、 デベロッパー、出店を検討する民間業者などと共有されて いる。対象者が多岐に渡るため、需要に合わせて柔軟に集 計できるしくみが必要となるが、NECと協業を進めること で、さらなる進展が見込まれている。

また「現在入手した映 像データを赤外線、GPSなど他の技術と組み合わせること でさらに価値のあるものになるのではと考えている。人流 をトータル的に広域、狭域なり必要に応じて把握、活用し ながら、まちづくりをしていく未来を見据えています。(鈴 木氏)」

安全、快適にまちを楽しんでもらえるように、将来 的にはカメラを人流計測だけではなく、見守り、防犯とい ったマルチユース利用も検討されており、引き続きスマート シティモデルプロジェクトとして国の協力を得ながら進め ていく予定である。

製品とソリューション

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